乳香(にゅうこう)とはムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂のことである。 オリバナム(Olibanum、アラビア語で乳を意味する لبن から派生した言葉「Al-luban, اللبان」に由来)、フランキンセンス(あるいはフランクインセンス、Frankincense、古代フランス語で真正な香を意味する)とも呼ばれている。 焚いて香として、または香水などに使用する香料の原料として利用されている。
ボスウェリア属の樹木はインド、オマーンなどの南アラビア、ソマリアなどの東アフリカに分布している。 これらの樹皮から分泌された樹液は空気に触れると乳白色~橙色の涙滴状の塊となる。その様子から乳香の名がつけられた。 これらの樹脂の性質は、樹木の種類や産地によって大きく異なる。 良質とされるものの商業的な生産は主にオマーンで行なわれており、乾季の間に天然ゴムの生産と同様に樹皮に傷をつけてそこに固まる樹脂を採取している。
一粒の大きさは大体1cmにも満たない事が多い。
乳香は紀元前40世紀にはエジプトの墳墓から埋葬品として発掘されているため、このころにはすでに焚いて香として利用されていたと推定されている。 古代エジプトでは神に捧げるための神聖な香として用いられていた。 神に捧げるための香という点は古代のユダヤ人たちにも受け継がれており、聖書にも神に捧げる香の調合に乳香の記述が見られる。 また、東方の三博士がイエス・キリストに捧げた3つの贈り物の中にも神の象徴として乳香がある。 日本にも10世紀には薫香の処方内への記述が現れるため、このころにシルクロードを通じて伝来したものと考えられている。
日本正教会を含む正教会では、現代でも香炉に乳香を使い、奉神礼で頻繁に用いる。振り香炉にも乳香が用いられる。
香水などへの使用が行なわれるようになったのは16世紀に入ってからであり、乳香を水蒸気蒸留したエッセンシャルオイルや溶剤抽出物であるレジノイドがこの用途に用いられるようになった。
また、鎮痛、排膿、止血作用があり、主に膏薬(狗皮膏など)の原料として使われる。